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小説を書く AI参照小説(試作品)

僕は世に言うニート。名前は英二。
「ふわぁ~」
寝ぼけ眼を擦りながら、ベッドから起き上がる。
今日は月曜日か……。
昨日は深夜までネトゲに勤しんでいたせいで睡眠時間が足りていない。
まあ、学校に行くのが面倒臭いことには変わりないんだけどね! どうせ行ったところで僕みたいな底辺カーストには居場所なんてないしなぁ……
そう思うと憂鬱になりながらも、僕は着替えて1階のリビングへと向かうことにした。

「おはようございます。兄さん」
「おーう……」
リビングに入ると妹の恵美理(えみり)が朝食の準備をしていた。
彼女は僕の妹だ。
容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能の三拍子揃ったスーパーガールである。
おまけに家事も得意という隙のないスペックを誇っている。
そんな完璧超人の妹に対して、兄の僕ときたら……
「いただきます」
僕は挨拶をして朝食を食べ始める。
今日のメニューはご飯に味噌汁、卵焼きといった純和風の和食だった。
うん、美味い! 妹が作った料理はどれも絶品だ。
本当に何でこんなに完璧なんだろう? 神様は不公平だと思うよ……
「あの……どうかしましたか?」
箸を止めて考え込んでいる僕のことを心配したのか、恵美理が顔を覗き込んでくる。
「いや、何でもないよ!」
慌てて誤魔化す僕。
危ない危ない。
つい見惚れてしまっていたようだ。
だってさ、可愛い女の子に見つめられると誰だってドキドキするだろう? しかもそれが自分の妹なら尚更だよ! それにしても、この子はいつ見ても綺麗な顔立ちをしているなぁ。
髪はサラサラだし、スタイルも良いし、胸も大きいし……って、あれ? 何か変なものが見えてしまったような気がするけど気のせいかな? 僕はもう一度よく見てみる。
そこにはパジャマの上着を脱ぎ捨てた状態の恵美理の姿があった。
彼女の上半身は下着姿になっており、その大きな膨らみを覆う白いブラジャーまでも丸見えになっていたのだ。
「……」
僕は言葉を失う。
そして数秒間、時が止まったかのような静寂が訪れた後―――
「きゃあああああっ!?」
という悲鳴と共に、顔面に衝撃を受けてそのまま後ろに吹き飛ばされる。
ドゴォッ!! 背中を壁に強打して息が出来なくなる僕。
えっ、一体何が起きたの? 訳がわからず混乱していると、恵美理が顔を真っ赤にして涙目になっていることに気づいた。
どうやら彼女に殴られたらしいということを理解するまでに更に数秒の時間を要した。
「もう知りません!!」
恵美理はそう言い残すと、自室へと駆け足で戻って行ってしまった。
どうしよう……完全に怒らせちゃったみたいだ。
このままじゃ学校に行けなくなってしまうじゃないか……
僕は痛む鼻を押さえながら途方に暮れていた。
◆ それから30分程経ってようやく機嫌を取り戻した恵美理と一緒に家を出た僕は、重い足取りで学校へ向かっていた。
結局、謝ることも出来ず仕舞いだったな……
今朝の出来事を思い出して溜息をつく。
はぁ……憂鬱だ。
「おいっ、そこのお前!」
突然後ろから声を掛けられて振り返ると、そこには見知らぬ男子生徒が立っていた。
身長は180センチくらいだろうか。
短く刈り揃えられた金髪にピアスを付けた如何にも不良っぽい風貌をした少年だ。
彼は不敵な笑みを浮かべながらこちらを見据えている。
ん? どこかで見たことがあるような……? 彼の姿を見て首を傾げる僕。
確か同じクラスの人のような気がするんだけど、名前が出てこない。
「おい!聞いているのか?」
再び声をかけられたことで思考を中断される僕。
いけない、考え事をしていたせいで返事をするタイミングを逃してしまった。
しかし、無視するのは流石にまずいか……
よし!ここは勇気を出して話しかけよう! 僕は意を決して口を開く。
「ぼ、僕ですか?」
緊張のせいで吃ってしまった。
恥ずかしい……。
すると目の前に立つ金髪ヤンキーはニヤリと笑って言った。
「そうだよ!お前以外に誰が居るっていうんだよ!俺様は寛大だからな。許してやるぜ!ただし、条件がある」
なんだか偉そうな口調だ。
うわー、めんどくさいな。
僕は内心でそう思いながらも表面上は愛想笑いをしながら言葉を返す。
「じょ、条件ですか……?」
「ああ、簡単なことさ!金貸してくれよ。有り金を全部だ。そうしたら今日のところは見逃してやってもいいぜ!どうだ、優しいだろ?」
うーん……正直あんまり優しくはないと思うけど。
でもここで断ったりしたら余計に面倒なことになってしまいそうなので、素直に従うことにした。
「わかりました……」
僕は財布を取り出して中を確認する。
良かった。
まだお金は残っていた。
「これでいいでしょうか?」
僕は1万円札を手渡した。
「おう、上出来だぜ!ありがとよ!また借りに来るからよろしく頼むわ!」
「はい……」
「んじゃあな!」
彼は満足げに笑うと、スキップしながら去って行った。
なんだったんだろう今の? まあいっか。
とりあえず助かったみたいだしね。
僕は安堵のため息をつくと、学校に向かって歩き出した。
◆ その後、教室に着いた僕は自分の席に座って机の上に突っ伏していた。
結局、妹には謝ることが出来ず仕舞いで登校してしまった。
せっかく仲良くなれそうな雰囲気になったと思ったのになぁ……
そんなことを考えていると、ふとあることに気が付いた。
あれ? 何か忘れてるような……? 何だろう? 何か大切なことを見落としているような感覚に襲われる。
暫く考えてみたけれど何も思い出せなかった。
きっと気のせいだろう。
僕は考えるのをやめることにした。

「おい、お前!ちょっとツラ貸しな!!」
放課後になって帰ろうとしたところで、僕はまたしても誰かに声をかけられた。
振り返ってみるとそこには先程の金髪ヤンキーが居た。
えっ、どうしてここに!? 驚きのあまり固まってしまう僕。
まさか学校にまで追ってくるなんて思わなかったのだ。「おいっ、聞こえなかったのか?早くしろよ!」
急かすように怒鳴られる。
怖い……
僕はビクビクしながらも仕方なく従うことにする。
「はい……すみません」
こうして僕は彼に連れられて校舎裏までやって来た。
そこで待ち構えていたのは、やはりというべきかあの不良少年だった。
「へっ、やっぱり付いてきやがったな!このクソ野郎がっ!!今日こそボコしてやる!!」
どうやら最初から僕が逃げられないようにして待ち伏せしていたようだ。
卑怯だと思う。
だけど、そんなことは口に出せない。
だって相手は上級生なのだ。
下手に逆らったりしたら何をされるかわからないし、ここは大人しく殴られるしかないかな……
諦めかけていたその時――
突然、僕の身体を淡い光が包み込んだ。
これは……治癒魔法? 温かい光に包まれた僕は、不思議と痛みを感じなくなっていた。一体どういうことだろうか……? 戸惑っていると、いつの間にか目の前に迫っていた金髪ヤンキーの顔が驚愕の色に染まっていた。
「な、なんだお前……その力は……?」
どうやら目の前のヤンキーも僕の変化に気付いたらしい。
しかし、今はそれどころではなかった。何故なら……
「ぐぎゃあああっ!!!!」
突然、金髪ヤンキーの全身から血飛沫が上がったからだ。
それはまるで鋭利な刃物で斬り裂かれたかのような傷跡だった。
「な、なんだよこれぇ……?」
金髪ヤンキーは地面に倒れ込むとそのまま動かなくなった。
死んではいないみたいだけれど、出血量が多すぎる。このまま放っておいたら死んでしまうかもしれない。
僕は慌てて駆け寄ると、止血のために患部に手を当てて回復魔法を使った。
すると見る間に流血が収まり、傷口が塞がっていく。
どうやら上手くいったみたいだ。
ほっと胸を撫で下ろす僕。
「うぅ……ここは……?」
しばらくして金髪ヤンキーが目を覚ました。
良かった。
なんとか一命を取り留めたみたいだ。
「ここは……どこだ……?」
意識を取り戻した金髪ヤンキーは、ぼんやりとした様子で周囲をキョロキョロと見回している。
「ここは学校の敷地内ですよ」
「そうか……俺はあいつらに呼び出されて……それで……」
そこまで言うと彼はハッとして勢いよく立ち上がった。
「そうだ!お前!俺に何をしたんだ!?」
凄い剣幕で問い詰めてくる。
しかし、僕は何もしていない。
むしろ助けてあげた側なのに……。
「いえ、何もしてないですけど……?」
「嘘つけ!だったらなんでこんなにも力が溢れ出てくるんだよ!」
そう言って興奮気味に叫ぶ彼の身体からは確かに魔力が感じられた。
しかもかなり強い。
おそらく上級魔族に匹敵するレベルだと思われる。
「そう言われても……」
「くそっ、わけがわかんねえ!もういい、とりあえず死ねっ!!」
言いながら殴りかかってくる彼。咄嵯の出来事だったので反応が遅れてしまった。
マズイ! 避けられない! 思わずギュッと目を閉じる僕。
しかし次の瞬間、辺りに響き渡ったのは肉が裂ける音ではなく、ドサッという何かが崩れ落ちるような鈍い音だった。
恐る恐る瞼を開くと、そこには見覚えのある人物が立っていた。
「大丈夫かい?ハル君」
「ユ、ユリウスさん!?どうしてここに?」
そこに居たのはなんと、先日お世話になったばかりの騎士団長様だった。
「どうしてここに?じゃないよ。迎えに来たに決まっているじゃないか」
「迎えですか……?でも確か、今日は非番だと仰っていましたよね?」
そう、彼は今日は休日なので仕事は無いと言っていたはずだ。それなのにわざわざ学校まで来てくれたのだろうか?
「ああ、そのつもりだったんだけれどね。さっき団長から連絡があって




、緊急事態だからすぐに学校に行けって言われたんだよ。まったく人使いが荒くて困っちゃうね」
肩をすくめながら苦笑するユリウスさん。
「えっと、すみません……」
申し訳なくて謝ると、何故か頭を優しく撫でられた。
えっ?何事? 困惑していると、背後から声が聞こえてきた。
「おいっ、そこのテメー!何やってやがる!」
振り返るとそこには、怒りの形相を浮かべた金髪ヤンキーの姿があった。
「あれ?まだ生きてたの?」
「なんだとぉ!?ふざけんなっ!!」
叫びながら再び襲いかかってくるヤンキー。
しかし――
「うるさいなぁ」
パチン! ユリウスさんの指が鳴ると同時に、ヤンキーは一瞬にして凍り付いた。
「これでよし、と」
満足げな表情を見せるユリウスさん。流石は騎士様だ。
見事な手際である。
「あの、ありがとうございました。おかげで助かりました」
「気にしないで。それより早く帰ろうか。皆も心配してるよ」
「はい、わかりました」
こうして僕は無事、家に帰ることができたのであった―――
「ただいま戻りましたー」
玄関を開けると、奥の方からドタドタと足音が響いて来た。
「おっ、やっと帰って来たのか。随分と遅かったじゃねーか」
出迎えてくれたのは父さんだった。「うん、ちょっと色々あってね……」
「そうなんですよ。ハル君は悪くないんです。悪いのは全てこの私なのですから!」
父さんの後ろからひょっこりと顔を出した母さんが、突然そんなことを言い出した。
「えっ!?ちょ、どういうこと!?」
戸惑っていると、今度は二階からドタバタと誰かが降りて来る音がした。
「兄貴ぃ~!!おかえりなさいなのだわっ!!」
階段を駆け下りた妹が勢いよく飛びついてくる。
「ぐふっ!こらエルナ、いきなり抱きつくなっていつも言ってるだろ?」
「むぅ……わかったのだわ……」
不満そうにしながらも離れてくれるエルナ。
どうやら聞き分けの良い子みたいだ。偉いな。
「ところで、なんで二人は僕の部屋にいるの?」
リビングにはソファーに座って寛いでいる二人の姿が見えた。
てっきりリビングで待っていると思っていたんだけど……。
「いや、だってここが一番落ち着くし……」
「私は兄貴と一緒にいたかっただけなのだわ」
二人ともそれぞれ理由があるらしい。
まあ別にいいけどさ。
「そうだ、今度一緒に出かけないか?」
「いいけど、どこに行くの?」
「それは行ってからのお楽しみってことで」
悪戯っぽい笑みを浮かべて言う父さん。
なんか怪しい……。
「あっ、そういえば父さんに渡すものがあるんだよ」
そう言ってポケットの中から例の物を取り出す。
「ん?これは……手紙?」
「うん。ほらこれ、昨日の晩に届いてたよ」
そう言って差し出すと、「おお、そうだったのか!ありがとう」と言って受け取ってくれた。
「差出人は誰だ?知り合いなのか?」
受け取った手紙を見ながら聞いてくる。
「うーん、名前は書いてなかったかな。でも封筒に王家の紋章が入っていたから、多分王様だと思う」
「なに!?本当か!?」
驚きのあまり、目を見開く父さん。
そりゃ驚くよね。
普通ならあり得ないことだもの。
「どうしてハル君にお城からの連絡が来たんでしょうね?」
首を傾げる母さん。
「さぁ?僕にもわからないんだよね。とりあえず中を読んでみたらいいんじゃない?」
「それもそうだな。それじゃあ失礼して……」
封を切り、中身を取り出し読み始める父さん。
一体どんなことが書かれているんだろう? 少し気になるかも……なんて思っていると――
「おい、マジかよ……!」
そう呟く声が聞こえてきた。
「どうかしたの?」
尋ねると、深刻な面持ちで答えてくれた。
「実はこの前、騎士団長のユリウスさんが魔王軍の幹部を倒したって話はしただろ?」
「うん、聞いたよ」
確か魔族の中でもトップクラスの実力を持った実力者で、かなりの強敵だったとか。
「その幹部が、どうやら死んだみたいなんだ」
「えっ!?それってもしかして……」
「ああ、殺されたんだ。しかも相手は人間だったらしい」
やっぱりそうか。
薄々そんな予感はしていたけれど、これで確信に変わった。
「でも、どうして人間が?もしかして、勇者が現れたの?」
「いや、まだ現れてはいないはずだ」
「そうなの?じゃあどうしてだろう?」
不思議に思って聞くと、父さんは真剣な表情で言った。
「おそらくだが、俺たちに対する警告なんじゃないかと思う」
「警告?」
「ああ、このまま放っておくと次はお前たちの番だぞっていうな」
なるほどね。確かにそういう意味だと解釈できなくもないかもしれない。
「つまり、今後はさらに警戒して行動しろということですね」
納得した様子の母さんの言葉に、父さんも同意する。
「ああ、その通りだよ。だから俺達もより一層、鍛錬に力を入れようと思っている」
「えっ?今まで以上に厳しくやるつもりなの?」
思わず問い返すと、力強く肯定された。
「もちろんだ!何が起こるか分からない以上、備えておく必要があるからな」
「そっか……。わかったよ」
これ以上反対しても無駄だと思い、素直に従うことにした。
こうして僕の平和(?)だった日常は終わりを告げたのだった。
翌日、僕はいつものように登校すると、教室の前で一人の男子生徒に声をかけられた。
「おっす、ハル。ちょっといいか?」
「おはよう、シンジ。別にいいけど、何か用事でもあるの?」
「いやまあちょっと話があってさ」
そう言うと、廊下の端まで連れて行かれる。
いったいなんの話だろうか? 心当たりはないんだけど……
「あのさ、最近噂になってるあの『黒髪の男』のことなんだけど」
「えっ……?」
予想外の言葉に戸惑ってしまう。
まさかここでその名前が出てくるとは……
「なにか知ってるのか?」
「うーん、まあ一応……」
どうしよう……。
本当のことを話すべきなのか? いや、でもこんな話をしたところで信じてもらえるとは思えないし……。
「なんだよ、歯切れが悪いな。まあいいや、それでさ……」
「ごめん、ちょっと急ぐからまた後で!」
慌てて会話を打ち切ると、そのまま走り去る。
「あっ!おい、待てって!まだ話が終わってないだろ!」
後ろから追いかけてくる声を振り切りながら、なんとか自分の席に辿り着くことができた。
はぁ、危なかった……。
もう少しで大変なことになるところだったよ……。
「ハル君、どうかしましたか?なんだか疲れているみたいですけど……」
心配そうに話しかけてきたエルナに、「なんでもないよ」と答えると、ホッとしたように胸を撫で下ろしていた。
「そうですか?ならいいんですけど……」
「それよりもほら、授業が始まるよ」
「あっ、本当ですね。では、続きは休み時間にでも……」
そう言って前に向き直った彼女を見て、僕も前を見る。
ふぅ、とりあえず助かったかな。
でもこれからどうしたものか……
そんなことを考えているうちに、午前の授業が終わり昼休憩の時間になった。
「よし、行くか」
今日は食堂に行く日なので、二人を連れて行こうと思い立ち上がる。
ちなみに、エルナは弁当を作ってきてくれていて、母さんが作ってくれたものらしい。
母さんの料理はすごく美味しいから、楽しみだなぁ。
「兄貴!一緒にお昼食べましょうなのだわ!」
元気よく駆け寄ってきたミコと共に教室を出ると、ちょうどシンジも出てきた。
「あれ?シンジもこっちに来たの?」
「ああ、なんかユウキが学食で飯を食おうって言い出してな」
「へぇ、そうなんだ。それじゃあ行こっか」
三人で連れ立って歩き出す。
「そういえば、結局昨日の話は聞いてなかったよね?」
「そうだったな。それじゃあ今のうちに説明しておくか」
そうして話を聞くことになったのだが……
「実は俺達、部活を作ろうと思っててさ」…………はい?
「ぶ、部活……?」
「ああ、そうだ。せっかく異世界に来て冒険できるんだから、それを活かした活動をしたいなって思って」
なるほど、そういうことか。
でも、それがどうして僕を巻き込むことに繋がるんだろう? 疑問に思っていると、シンジが答えを教えてくれた。
「で、とりあえずまずはメンバーを集めることにしたんだけど、そこで問題が起きたわけだ」
「問題って?」
「ああ、勧誘を始めてすぐに、女子がどんどん入部届を出していったんだよ」
「えっと、それはつまり……?」
「つまり、男子部員はお前だけってことだ」……えっ!?マジで!?
「それで、他の男子にも声を掛けてみたんだけど、みんな怖気づいて断ってくるし、かといってこのままじゃ廃部になるかもしれないし……」
「だから、お前に白羽の矢を立てたという訳だ」
なるほど、そういうことだったのか。
「それに、俺も勇者だしな。困ってる奴がいたら助けてやりたいんだよ」……えっ?
「えっ?勇者?誰が?」
思わず聞き返すと、呆れたような顔をされた。「おい、ふざけてるのか?俺以外に誰がいるっていうんだよ」……えっ?冗談だよね? だって、シンジは普通の一般人にしか見えないんだけど……。
「シンジ、悪いことは言わないから病院に行った方がいいよ」
「なんでだよ!俺は正真正銘の勇者だぞ!ステータス見せれば分かるだろうが!」
「いや、別に疑ってるわけじゃないよ?ただその……なんと言うか……」
本当に信じられなくて言葉に詰まっていると、横にいたエルナさんが口を開いた。
「あの、私からも質問があるのですけどよろしいでしょうか?」
「えっ?エルナさん?」
驚いている僕のことを気にした様子もなく彼女は続ける。
「はい、私は貴方のことを存じ上げておりません。ですが、貴方は私のことをご存知のようですね。ということは、どこかで会ったことがあるということですか?」
「いや、多分知らないと思うよ。でも、僕はエルナさんのことを知っている気がするんだよ……」
うーん、やっぱり思い出せない。
でも、こんな綺麗な人を忘れることなんてあるんだろうか? 悩んでいると、今度はシンジが話しかけてきた。「なあハル、お前まさか……」
「な、なにかな?」
「この子のこと好きなんじゃないよな?」……はい?
「ちょっと待って!何を言いだすのさ!」
慌てて否定すると、二人はなぜか残念そうな表情を浮かべた。
「そうか、違うか……」
「そうですよね。ハル君は、私以外の女性には興味がないはずですから」
うん?なんか変なこと言ってない?
「まあいいか。それで、どうすんだ?入るなら早い方が助かるけど……」
「そうですね。ハル君さえ良ければ、私たちと一緒にやりましょう?」……どうしようかな。
正直、乗り気ではないけど、ここで断ったら二人とも傷ついちゃうかも……
そう考えていると、ミコが袖を引っ張ってきた。
「兄貴、これはチャンスなのだわ。これを逃せば、きっともう女の子とは縁のない生活を送ることになるのだわ」……ミコまでそんなことを言うのか。
「……わかった。僕でよければ協力させて貰うよ」
こうして、僕たちは部活動をすることになった。
ちなみに、エルナさんは生徒会に入っているらしく、放課後は忙しいらしい。なので、基本的にはシンジと二人で活動するようだ。
「それじゃあ改めてよろしくな、ハル!」
「こちらこそよろしくね、シンジ」
差し出された手を握ると、嬉しそうな笑顔が返ってきた。
「さあ、早く学食に行きましょう!」
「あっ!ちょっ、引っ張らないで!」
そのまま腕に抱き着かれて、引きずられるように歩いていく。
「おいっ!俺を置いて行くなよ!……ったく、しょうがねぇなぁ」
そうして三人で食堂に向かったのだが……
「なあ、なんか視線を感じないか?」
「……奇遇だね。実は僕も感じてたところなんだ」
食堂に入った瞬間、周りの生徒からの視線が集中していることに気づいた。
しかも、そのほとんどが男子生徒たちだ。
「おい、あいつが噂の……」「ああ、間違いない。あの女たらしか」「イケメン爆ぜろ!」
などと言った声が聞こえてくる。……一体どういうこと?
「なあ、これってもしかして……」
シンジが何かに気付いたようで、言いかけたところで、後ろから声を掛けられた。
「おおっ!シンジではないか!久方ぶりだのう」
振り返ると、そこには赤髪の男が立っていた。
「げっ!グリム先生!?」
「ほう、その反応はまるで会いたくなかったかのような物言じゃのぅ?」
「い、いえ、そういうわけじゃ……」
「ふむ、ではそういうことにしておくかの。それで、そちらのお主は見たことがない顔じゃのぅ?」
急に話を振られて驚いたものの、なんとか答えることができた。
「は、初めまして。僕はハルと言います。えっと、今日からこの学園に通うことになりました」
「なるほどのう。お主が例の新入生という訳か。わしはグリム・レヴォート。この学園の教師をしておる」
「はい!よろしくお願いします!」
「うむ、礼儀正しい子じゃの。……おっと、そういえばシンジよ。まだ昼食を取っていないのではないか?一緒にどうかの?」
「いや、せっかくですけど遠慮しておきます。これから用事があるんで……」
「そうか……それは残念じゃの。また機会があれば誘うとするかの。それではの」
そう言うと、グリムさんは去って行った。
「ねえ、今の人は誰だったの?」
「あの人は、俺たちが通ってた学校の担任だよ。でも、なんでこんなところにいるんだ?」
不思議に思っていると、横からエルナさんの質問が飛んできた。
「先ほどの方が言っていましたが、貴方たちは元の世界にいた頃からの知り合いなんですか?」
「いや、さっき初めて会ったんだけど……」
「ええっ!?そうなんですか?」……どうやら、エルナさんには信じられないようだった。
「まあ、とりあえず今は飯を食おうぜ」
シンジの言葉に同意して、僕たちは食事を取りに行った。
そして、食べながら話を聞くことにした。
「シンジ、さっきの人が勇者だって話は本当なの?」
「ん?ああ、そうだぞ」……マジかよ。本当に勇者がいたなんて。
「でも、ステータスを見せてもらってないから何とも言えないんだよな……」
「確かにそうですね。ですが、彼の強さなら問題ないと思いますよ?」……やっぱり強いんだ。でも、それならどうしてあんなところにいるんだろう? 疑問に思いながらも、食事を終えて教室に戻った。
「それじゃあ、今日の授業はこれで終わりだ。各自気を付けて帰るように」
午後の授業が終わって帰り支度をしていると、隣に座っているミコが話しかけてきた。
「兄貴、ちょっといいのだわ?」
「うん、どうしたの?」
「実は、相談したいことがあるのだわ」……珍しいこともあるものだ。いつもは一人で勝手に行動しているのに。
「分かった。ちょっと待っててね」
ミコには悪いけど、先に帰って貰うことにして、シンジの元へと向かった。
「シンジ、この後時間あるかな?」
「ああ、別に大丈夫だけど……お前も大変だな」


吾輩は犬であるである。名前はまだない。
そんな吾輩は今、とある人物に飼われている。
「おいで」
そう言って吾輩の頭を撫でるのは、飼い主であるご主人様だ。名前はタカシさんというらしい。
ご主人様は吾輩を膝の上に乗せると、ゆっくりと語り始めた。
「今日はお前に見せたいものがあるんだ」
見せたいもの? なんだろう。
首を傾げる吾輩を見て、ご主人様が笑う。
「ふふっ、それはな……これだよ!」
言うや否や、ご主人様は自分の首輪からリードを外すと、それを吾輩の首へと巻き付けた。そしてそのままグイッと引き寄せられる。
「どうだい?似合ってるかい?」……正直あまり嬉しくはないのだが、まあご主人様が喜んでいるならいいか。
「よーし、じゃあ散歩に行くぞ!」
ご主人様に手を引かれて家を出る。まだ朝も早い時間だというのに、既に太陽はギラギラと輝いていた。
「暑いね〜。でも夏って感じがするよね〜」
ご主人様が汗を拭いながら呟く。そうだね、と答えたつもりだが、実際に口から出てきた音はワン!という鳴き声だけだった。
しかし、この暑さの中でもご主人様の手はとても温かかった。
***
「ねえ見て、あれ可愛くない?」
「ほんとだ、チワワかな?それにしても可愛い……」
すれ違う女性達がこちらを見ながらヒソヒソと話している。別に悪いことをしているわけではないはずなのだが、なんだか少し恥ずかしい。
しばらく歩くと、公園が見えてきた。ここはよくご主人様と一緒に遊びに来る場所だ。
「ちょっと休憩しようか」
ベンチに腰掛けるご主人様の隣へ座ろうとすると、「こっちに座って」と言われてしまった。仕方ないので隣ではなく前へと回り込む。すると今度は、もっと近くに寄れと言われる。結局最終的に、ご主人様のすぐ横まで移動させられてしまった。
それからしばらくの間、ご主人様は何も言わずに空を見上げていた。時々優しく微笑むその顔に見惚れてしまう。……ああ、好きだなぁ。
思わず手を伸ばしてしまいそうになる衝動を抑えながら、ただひたすらに時が流れるのを待つ。……………………もうそろそろいいか。
我慢の限界に達したところで、ようやくご主人様が立ち上がってくれた。良かった……。危うく発狂するところだったぜ……。
再び歩き出したご主人様の横に並ぶようにして足を進める。早く家に帰りたいような、このままずっと歩いていたいような、不思議な気持ちになった。
「……おや?」
突然立ち止まったご主人様の目線の先には、一匹の子猫がいた。おそらく親とはぐれたのであろう、ニャーンと鳴きながら寂しげにこちらを見つめている。
ご主人様はその子猫を抱き上げると、優しい声で話しかけた。
「大丈夫だよ、僕達と一緒に行こう」
そう言って子猫を抱いたままどこかへ行こうとするご主人様を呼び止める。
『どこへ行くんです?』「えっとね、とりあえず涼しいところに連れていこうと思って」……確かにこんな真夏の炎天下の中を歩かせるわけにはいかないか。ごめんなさい、と謝る代わりに小さくワンッと吠えると、気にしないでと言うように頭を撫でられた。
***
「はい、どうぞ」
ご主人様からミルクの入った皿を受け取ると、ペロリと一口だけ飲んですぐに返した。
「あっ、飲まないんだ。どうして?」
不思議そうな顔をして訊ねるご主人様に答える。
『さっきいっぱい運動したから疲れちゃったんですよ』
「ふぅん、そういうものなのか……」……本当は喉が渇いているのだけれど、もう少しの間だけ甘えてみようと思う。だって今は、ご主人様との貴重な二人きりの時間だから。
「……よし、決めた!」
急に大きな声を出したご主人様に驚いていると、彼は吾輩に向かってこう言った。
「お前の名前だけどね、今日からポチにするよ!」…………はい? 今なんて言いました?ポチ?ぽち?pochi???????…………嘘でしょう?冗談ですよね? そんな吾輩の心の声が届いたのか、ご主人様は笑顔を浮かべたまま固まっている。……これはまずいな。
なんとか説得しようと試みるも、吾輩の言葉はやはり通じない。それどころか、吾輩が嫌がっていると思ったらしいご主人様は、さらに強くリードを引っ張ってきた。
「ほら行くよ、ポチ!」
『ちょっ、待ってください!』「待たなーい!」
吾輩は半ば引きずられるような形で、その場を後にすることになったのであった。……まあ、いいか

吾輩は犬であるである。名前はまだない。
そんな吾輩は今、とある人物に飼われている。
「おいで」
そう言って吾輩の頭を撫でるのは、飼い主であるご主人様だ。名前はタカシさんというらしい。
ご主人様は吾輩を膝の上に乗せると、ゆっくりと語り始めた。
「今日はお前に見せたいものがあるんだ」
見せたいもの? なんだろう。
首を傾げる吾輩を見て、ご主人様が笑う。
「ふふっ、それはな……これだよ!」
言うや否や、ご主人様は自分の首輪からリードを外すと、それを吾輩の首へと巻き付けた。そしてそのままグイッと引き寄せられる。
「どうだい?似合ってるかい?」……正直あまり嬉しくはないのだが、まあご主人様が喜んでいるならいいか。
「よーし、じゃあ散歩に行くぞ!」
ご主人様に手を引かれて家を出る。まだ朝も早い時間だというのに、既に太陽はギラギラと輝いていた。
「暑いね〜。でも夏って感じがするよね〜」
ご主人様が汗を拭いながら呟く。そうだね、と答えたつもりだが、実際に口から出てきた音はワン!という鳴き声だけだった。
しかし、この暑さの中でもご主人様の手はとても温かかった。
***
「ねえ見て、あれ可愛くない?」
「ほんとだ、チワワかな?それにしても可愛い……」
すれ違う女性達がこちらを見ながらヒソヒソと話している。別に悪いことをしているわけではないはずなのだが、なんだか少し恥ずかしい。
しばらく歩くと、公園が見えてきた。ここはよくご主人様と一緒に遊びに来る場所だ。
「ちょっと休憩しようか」
ベンチに腰掛けるご主人様の隣へ座ろうとすると、「こっちに座って」と言われてしまった。仕方ないので隣ではなく前へと回り込む。すると今度は、もっと近くに寄れと言われる。結局最終的に、ご主人様のすぐ横まで移動させられてしまった。
それからしばらくの間、ご主人様は何も言わずに空を見上げていた。時々優しく微笑むその顔に見惚れてしまう。……ああ、好きだなぁ。
思わず手を伸ばしてしまいそうになる衝動を抑えながら、ただひたすらに時が流れるのを待つ。……………………もうそろそろいいか。
我慢の限界に達したところで、ようやくご主人様が立ち上がってくれた。良かった……。危うく発狂するところだったぜ……。
再び歩き出したご主人様の横に並ぶようにして足を進める。早く家に帰りたいような、このままずっと歩いていたいような、不思議な気持ちになった。
「……おや?」
突然立ち止まったご主人様の目線の先には、一匹の子猫がいた。おそらく親とはぐれたのであろう、ニャーンと鳴きながら寂しげにこちらを見つめている。
ご主人様はその子猫を抱き上げると、優しい声で話しかけた。
「大丈夫だよ、僕達と一緒に行こう」
そう言って子猫を抱いたままどこかへ行こうとするご主人様を呼び止める。
『どこへ行くんです?』「えっとね、とりあえず涼しいところに連れていこうと思って」……確かにこんな真夏の炎天下の中を歩かせるわけにはいかないか。ごめんなさい、と謝る代わりに小さくワンッと吠えると、気にしないでと言うように頭を撫でられた。
***
「はい、どうぞ」
ご主人様からミルクの入った皿を受け取ると、ペロリと一口だけ飲んですぐに返した。
「あっ、飲まないんだ。どうして?」
不思議そうな顔をして訊ねるご主人様に答える。
『さっきいっぱい運動したから疲れちゃったんですよ』
「ふぅん、そういうものなのか……」……本当は喉が渇いているのだけれど、もう少しの間だけ甘えてみようと思う。だって今は、ご主人様との貴重な二人きりの時間だから。
「……よし、決めた!」
急に大きな声を出したご主人様に驚いていると、彼は吾輩に向かってこう言った。
「お前の名前だけどね、今日からポチにするよ!」…………はい? 今なんて言いました?ポチ?ぽち?pochi???????…………嘘でしょう?冗談ですよね? そんな吾輩の心の声が届いたのか、ご主人様は笑顔を浮かべたまま固まっている。……これはまずいな。
なんとか説得しようと試みるも、吾輩の言葉はやはり通じない。それどころか、吾輩が嫌がっていると思ったらしいご主人様は、さらに強くリードを引っ張ってきた。
「ほら行くよ、ポチ!」
『ちょっ、待ってください!』「待たなーい!」
吾輩は半ば引きずられるような形で、その場を後にすることになったのであった。……まあ、いいか 
。名前なんかよりご主人様と一緒に過ごせる時間の方が大切だもんね!
「あー、楽しかった!」……それは良かったですね。
「また散歩に行こうね、ポチ♪」…………はい。
こんにちは、作者のあいすです。
今回は短編ということで、普段よりも少し短い文章となっています。そのため読みやすいかと思いますが、もし物足りないと感じた方はぜひ長編の方も読んでいただけたら嬉しいです。
では最後にもう一度、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!よろしければ次回作にも期待していただければ幸いです


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